< 富士山と ふるさと富士山を、「日本の自然文化遺産」に >

 日本には、「自然文化遺産」という価値観が薄かったように見受けられます。長い歴史と地域特有の生活文化をもつ国なのに残念なことです。そこで私たちは、富士山という『日本の自然文化遺産』について考えてみたいと思います。  
 
 これまで、私たちは富士山を敬愛し、有史以来日本人に与え続けてきた深い意味に注目し、その価値の紹介をインターネットを通じて行ってきました。私たちはこの取組の過程で、日本列島には300余の「ふるさと冨士山」が存在することを知りました。各地にある富士山は地域それぞれにとって、深く大切な意味をもつ、生活と精神文化の象徴的存在であったと思います。そして、それは日本にとって「自然文化遺産」という価値に当たるのではないかと思います。 

 これらすべての富士山をネットワークする、新しい活動を提唱したいのです。それは、「ふるさと富士山」をもつ各地域で、「自然文化遺産」の認識と評価をもとに、住民によって醸成される新しい生活文化の活動です。地域の歴史、文化、伝統、自然、環境を大切にし、その味わいを噛みしめ、その思いを日々の生活に活かしたいと願っています。  

 そこで、『富士山と、ふるさと富士山』の価値を研究・創造する活動を、『おらが富士プロジェクト』と呼ぶことにしました。このプロジェクトの目的は、富士山を核とする地域おこしであり、日本おこしの実現です。そこから、きっと「環境立国」、「観光立国」としての日本の姿も見えてくるでしょう。

 西洋は海に面し、  
 東洋は山に面する。

 これは、フランスの詩人・劇作家ポール・クローデル氏の言葉(『朝日の中の黒い鳥』)です。氏はフランス大使として日本に長く駐在し、日本の自然と日本人の感性を高く評価した文人として知られています。西欧文化を知り、同時に日本文化を知る詩人ならではの、神髄を見抜いた言葉であるといえるでしょう。  
 クローデル氏も指摘しているように、私たち日本人の精神の根幹には「お山」があります。山を「お山」と呼んで崇敬し自然を尊重する精神が、日本列島各地に「ふるさと富士山」を生んだのだと思います。そしてそこから日本特有の文化が生まれ、清潔、単純、感謝し、助け合う民族的精神風土が生まれたと思います。この美しい伝統はいま衰弱しかけ、日本人は世情の不安定と混迷に揺らいでいます。

 山を仰ぎ、木々を呼吸し、月を見上げ、風を読み、一年二十四節気の微妙な季節の変化を味わう精神風土を呼び起こすことが、地球温暖化の進むこの時代に大切な基本ではないでしょうか。日本人本来の、自然とのコミュニケーションを取り戻すためにも、『富士山と、ふるさと富士山』を日本の「自然文化遺産」として考えてみましょう。

 ごいっしょに、『おらが富士プロジェクト』に参加なさいませんか。「美しかった国・日本」から、ほんとうの「美しい国・日本」へ。そして「足る」ことを知る日本へ。世界の諸民族から敬意をもって認識される国づくりは、そこから始まるのではないかと考えています。


■NPO PLANT A TREE PLANT LOVE
理事長  勝田 祥三
2007年 12月