ひなたぼっこばなし 第52話 「まねき猫にまねかれ散歩 」
2月のおわりのころは、ずっと天気が悪かったですね。28日のいちばんさいごの日だけ、少しお日様が出てくれました。そこで、土曜日だったこともあり、私と夫と息子と愛犬まるとで散歩にいきました。
散歩といっても、あてのない散歩ではなくて、豪徳寺(ごうとくじ)というお寺に、まねき猫を買いにいくというちゃんとした目的のある散歩です。
ヨモギがどこにあるかわかるかな。
ミモザの花のきれいなこと。
春は黄色い花が多いと思いませんか。
豪徳寺には、まねき猫のお話が伝わっています。知っていますか?
むかしむかし、彦根藩二代目藩主・井伊直孝が鷹狩(たかがり)の帰りに、寺の前を通りかかりました。すると門前で、一匹の猫が「おいで、おいで」と手招きをしているではありませんか。直孝は、ふしぎに思い、猫にさそわれるままに寺に寄ることにしました。そして和尚さんとお茶をのんで話をしていると、にわかに空が暗くなり、ピカッと天をさくような稲光がはしり、バリバリッ、ドドーンッ。ザザァーッ。バケツをひっくりかえしたような大雨が降り始めました!もし、猫が手招きしてくれなければ、あのまま進んで、雷にうたれて死んでしまったかもしれません。直孝は、「あの猫は幸運を招く猫にちがいない」と感謝し、この寺をずっと大切になさったということです。
幸運を招く猫は、すでに私の机の上に2匹います。丸顔で上品ないい顔をしているんですよ。今回、私が買ったのは「豆招き猫」。2センチぐらいの小さな猫ちゃんです。お守り袋にいれるのにちょうどいいサイズなので、お世話になった人たちに、あげたいなと思って。
着きました。豪徳寺!
みんな、だれかの願いごとをかなえてかえってきたんだ。
豪徳寺までは、私の家からのんびり歩いて往復2時間ぐらい。烏山(からすやま)緑道を歩いていくと、道端にヨモギやナズナ、ハコベ、フキがはえていました。みずみずしい緑は初春色でさわやか。帰り道、世田谷線の宮坂駅近くのたこ焼き屋でたこ焼きを買って、公園のベンチで食べました。中がやわらかくて、アツアツで、おいしかった!それから、万葉の小道を通りながら、木々にかけてある万葉集の和歌をよんだり、古いレコードを売っている店にたちよったり、とつぜん目の前にあらわれたタイ焼き屋さんでタイ焼きを買って食べたり…。まさに、まねき猫にまねかれたのんびり散歩でした。
そして、その日の夜、母が五目寿司をつくってくれたので、お寿司のおにぎりに薄焼き玉子の着物を着せて、ひな寿司を作りました。もう3月ですね。ついこの前、お正月がきたばかりだと思っていたのに。ぼーっとしているうちに、「あら、クリスマス」なんてことにならないように、少し、気をひきしめなくてはいけませんね。
皮がパリッ。あんこ、どっさりのたいやき君。
今年のひな寿司はちょっとつかれ気味。