ひなたぼっこばなし 第40話 「 もやもや 」

ミツバチ
菜の花がへやで花開いています。
ここだけ春。
ミツバチの巣箱
ねているまるちゃんの頭。
 
  なんて寒いのでしょう。朝、庭にしもばしらがたっていました。土の中で冬をこしている小さい虫たちには、土をもちあげる氷の音が聞こえるのでしょうか。私もきいてみたいなあ。

 冬をこすといえば、冬眠(とうみん)する動物はたくさんいますね。私も「ないしょのゆきあそび」という、冬眠するクマの子の話を書きましたし、この間幼稚園で、クマが出てくる「ふうちゃんのそり」という紙芝居をよみました。お話ししましょう。ふうちゃんという女の子が、おじいちゃんが作ってくれたソリですべっていたら、スピードが出すぎてひゅーんと宙をとんで、クマの穴におちてしまいます。穴の中ではクマのお母さんが子グマとねむっていました。でも、だいじょうぶ。ふうちゃんは、その晩クマのお母さんによりそってあたたかくねむることができました。読みおわったあと、子どもたちは、「よかったね」「くまさん、あったかいんだね」などと言っていました。

 2月のはじめ、新聞に、クマ猟(りょう)に出ていた人が冬眠中のクマをしとめたあと、クマを穴から出そうと中に入ったら出られなくなったという記事がのっていました。犬をだいてあたたまり、ぶじに発見されたようで本当によかったと思います。私は、冬ごもりしているクマをうつ猟があることをはじめて知りました。でも、ここでうーんと考えこんでしまいました。冬眠していていきなりころされたクマと、ふうちゃんをあたためたクマがだぶってしまったのです。現実とお話はまるでちがうことは、じゅうぶんわかっているのですが、なんか、もやもや。ずっと、もやもや。

 椋鳩十さんという作家がいます。「片耳の大シカ」「大造じいさんとガン」など、猟師(りょうし)と野生の動物の心の交流を描いた物語をたくさん書いています。同じ心臓の音をもつ生き物どうしが、真剣に向かい合っています。そこには、同じ大地に生きる者どうしの「公平さ」がありました。ねむっているクマをうつことは、どうも不公平な気がします。でも、ねむっている人をおそうクマもいるわけだし。あーあ、やっぱり、もやもや。

 外は冷えているというのに、へやの中では菜の花が満開です。柴犬まるちゃんが、きもちよさそうにねています。山にもはやく、春がくればいいのに。

◎「ふうちゃんのそり」(童心社 神沢利子 脚本/梅田俊作 画)