ひなたぼっこばなし 第16話 「 いつもとかわらないおおみそか 」

2005年もそろそろおしまい。一年の一番さいごの日、大晦日(おおみそか)になると、毎年、お節料理をつめるお重(じゅう)や、お屠蘇(とそ)セット、お椀(わん)を出します。桐の箱から一つひとつ和紙に包まれたお椀をだしていると「また一年おわっちゃった」といつも思います。と同時に、今年もこうしてぶじにお椀を出せることに感謝します。だって、家族に悲しいことがおきたり、地震で家がこわれたり、私自身が病気になったりしたら、いつもとかわらないお正月のしたくはできないかもしれません。結婚や旅行などうれしい理由でいつもとちがうのはいいけど、実際に悲しい気持ちでこの年の暮れを迎えている方たちもいるのです。

普通のことのようだけど、‘いつもとかわらない’ということは、大切で幸せなことなんだなとしみじみ思います。

大晦日に決まってやることといえば、お墓参りがあります。春秋のお彼岸(ひがん)とお盆と大晦日には必ず、父方と母方のお墓、愛犬のお墓に行きます。掃除をして、松入りの花をたむけ、一年の報告とお礼を伝えます。31日の忙しいときにお墓参りなんて、と思うでしょう。でも、これがうちのいつもの大晦日のスタイルなんです。

みなさんは、年越しそばを食べますか?
うちでは、除夜の鐘が「ご〜ん」となり始めるころに食べます。私が子どものころからずっとそうでした。でも、この前若い人たちにこの話をしたら、「うちでは、夕飯にたべます」「そばじゃなくてうどんをたべます」といろんな意見がでてびっくり。

年越しそばは、「人生はそばのように細いながらも長く」という意味があって、江戸の中ごろから始まったそうですが、関西では「運をよぶ」という意味で、「うんどん(うどん)」を食べる地域もあるんですって。自分の家で長年くり返されている習慣が、正しいわけではないのですね。そのちがいは、お母さんやお父さん、そのまたお母さんやお父さん、そのまたお母さんやお父さん…数え切れないほど多くの先祖さんたちが、脈々とその家に伝えてきたものなんですね。いつもとかわらない一年のおわりの家族の行事として。

さて、2006年。みなさんが元気に健康にすごせますように!
そして、私はいつもとかわらない大晦日をまたむかえられればそれでいいとねがいながら、そろそろ大掃除にとりかかることにいたしましょう。やれやれ・・。

来年は戌(いぬ)年。まるは、あいかわらず寝正月になりそうです。