ツツジのつぼみが、ぷっくりふくらんできました。もっと咲いたら、みつをすわせてもらおうっと。楽しみ、楽しみ。
 さて、第五話の続き、愛犬まるのお話をしましょう。まるが家にきて二日目、大事件がおこりました。部屋で遊んでいるとき、床に落ちていた乾燥剤をパクリと食べてしまったのです。あわてて口に手をいれて出そうとしたのですが、すでにおそし。夜だったので、24時間開いている動物病院に直行。塩水をのませて、胃の中のものを全部はきださせました。
 ところが、この体験で、まるはものすごい恐怖感と私たちに対する不信感をもってしまったようです。この日以来、私たちが口のあたりに手をだすと、いやなことをされると思って、ガブッとかむようになってしまいました。まだ子どもの歯でしたが、けっこう痛い。そして、怒っているまるの顔のものすごさといったら。歯をむきだし、鼻の上にはたてじわがくっきり。こ、こわいっ。こりゃ、なんとかしなくてはと、さっそくトレーナーさんに、SOS!
さっそうと登場したのは、警察犬と盲導犬の訓練士だった遠藤さんという女性。不思議なことに、まるは、初対面のときから遠藤さんにごろにゃーんと甘え、ちゃんということをきくではありませんか。なんじゃ、こりゃ。すっかり自信を失ってうつむく私たちに、遠藤さんのきびきびした声がとんできました。
「上下関係が逆になっています。まるちゃんがボスになっているので、自分が一番下だということを、てってい的におしえこまなければいけません。いいですね」
「は、はい!」


 かくして、トレーニング開始。いろんな方法をおそわりましたが、一番のポイントはごはんのあげ方かな。まず、フードをいれた食器をもったまま、お座りをさせ、「まて」と指示して3分またせる。そして手にフードを一つかみ持ち、まるの前にだし、さらに「まて」。まるが飼い主の目をきちんとみたら「よし」といって食べさせる。アイコンタクトをくりかえして、手から一回一回フードをあげていきます。つまり、手は食べ物をくれるうれしいもの、食べ物をもらうためには、人間にしたがわなければならないことをおしえ、自分が下だということを覚えさせていくわけです。
 トレーニングをはじめて1年6ヶ月。やっと、まるも自分が下だとわかってきたようです。やれやれ、ながーい道のりでした。犬にも一匹一匹性格があって、飼い主のつきあい方でよくも悪くもなるんだなということがよくわかりました。ちなみに、まるの家族順位で一番上は夫、私はナンバー2。
 でもね、ここだけのはなしですが、まるが一番スキなのは、ワタシです。だって、まるが、そういったんですもん。

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