私は、散歩をするのが大好きです。今、日陰で地味に咲いているのがどくだみ。お茶にするには、ちょうどいい時期なんですが、犬のおしっこ調味料がかかっていると思うと…
ちょっとね。雨あがりのあと、生け垣のそばを通ると、むっとするようなにおいがしてくることがあります。「草いきれ」という言葉がありますが、まさに、それ。みなさんも、雨あがりに緑の多いところで、ぜひ鼻をくんくんさせてみてください。深い緑のかおり、「草いきれ」に出会えるかも。
散歩をしていると、こんなふうに、野の花や草の香りに気付いたりして、気持ちがホッとリラックスします。そして、意外に、お話のいいアイデアが浮かんだりするんですよ。ただ、ぼーっと歩いているだけなのにね。
みなさんは、どんなとき、ホッとしますか?多分、すぐに答えられる人はそんなにいないと思います。私だって、10代の初めのころ、「あぁ、いい気持ち。ホッとするなあ」なんて特に思わなかったもの。でもね、今から思えば、ホッとする場所はありました。ふとんの中です。心静かに一人になれる場所。空想に遊んだり、深刻(しんこく)に物事考えたり・・安心して、自分と向かい合える場所でした。言葉を変えれば、自分にとって「居心地のいい場所」っていう感じかな。
私が、'ホッ'とするって、こういう感覚なんだって実感したのは、六年前。赤ちゃん雑誌のルポで、「島の子育て」を取材するために、1週間滞在した与那国島(よなぐにじま)でのことでした。
与那国島は、沖縄から南西へ509キロメートル、日本で一番西にある小さな島。つまり、日本で一番最後にお日様が沈む島です。島の暮らしのリズムは、おだやかでのーんびり。強い陽射しの中で、ガジュマルの木がすずやかな木陰をこしらえて、「そんなに急がないで、一休みしていきなよ」って誘っているようでしたし、夕暮れ時は、開け放した家から三線(さんしん※)の音が流れてきて、思わず聞きほれてしまいました。
取材する家族を紹介してくださったのが、与那国馬の保存と交流を目的に、「与那国馬広場」を運営している、久野まさてるさん。島の人たちは、久野さんのことを、マークンと呼んでいます。
そもそも横浜生まれのマークンは、日本の在来種である与那国馬が絶滅(ぜつめつ)しかかっているという新聞記事を読んで、いてもたってもいられなくなって、与那国まできてしまったという不思議な人です。
マークンが案内してくれた、与那国馬の放牧場は、青い海につきだすような岸壁の上に広がる草原の海。そこで、馬たちが静かに草を食べています。むしゅ、むしゅという音だけが聞こえてきます。草原には、死んだ馬の骨がそのまま放置されています。仲間の骨のそばに生えている若草を、おいしそうに食べる馬たちを見ていると、命の
"輪"みたいなものを感じさせられます。死んで土になり、その土から草がはえ、それをまた食べて生きていく・・。
そんな馬たちの気配を感じながら、がけっぷちにすわって、ぼぉーっ。遠くの水平線が海と空にじんわりにじんで、青色グラデーションが、とってもきれい。はるか目の下にひろがる海の表面に、ぷたぷた浮かんでいる丸いお盆のような海がめたち。身体の力をぬいて、そんな風景に脳みそを遊ばせていると、五感がひらかれて、なんともいい気持ち。その時、ホッとするって、こういう感覚なんだなあって、つくづく思いました。今でも、その感覚は忘れられません。ですから、与那国島は、私の'ホッ'の原点。
与那国島にはなかなか行かれませんが、うれしいことに、マークンがホームページをつくっています。時々、ホームページを開いて、マークンが撮った日本で一番最後に沈む夕日の写真にホッと息抜きしたりしています。
・ ・ということは、あれ?ちょっと、まって。今、現在、私のホッとする場所は、「パソコンの前」ってこと?うーん、これは、ちょっとさびしすぎる…。
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〒106・0032 東京都港区六本木5-13-9-605 TEL. 03-3568-6585
e-mail:kodomo-times@plantatree.gr.jp 「ひなたぼっこばなし係」まで
● 与那国馬広場HP http://www.cosmos.ne.jp/?markun/
※三線…沖縄・奄美の弦楽器の一つ。三味線とほぼ同じで、やや小さい。胴に蛇皮がはられている。
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