DISCOVER JUBAN 麻布十番再発見 ─ 16 ─ 街路樹−2−
ハナミズキとヤマボウシについて5月号に書きましたが、5月に入ってヤマボウシの白い花が咲いているのに気が付きましたか。「花のように見える総苞片の先端がハナミズキはくぼんでいますが、ヤマボウシの苞(ほう)は先がとがっています」と書きましたが、4月のハナミズキと5月のヤマボウシ、両方の写真を撮ることが出来ましたのであらためてご紹介します。こうして比べて見ると明らかに違うのですが、高い木の上に咲いている白い花(苞)を見ると区別が付かず、いつまでもハナミズキが咲いていると思っていた方も多いのではないでしょうか。木々はよく見ると、花の形が違うように葉の形もまた違いますし、幹の木肌もみな違っていることに気が付くと思います。(写真 右 ハナミズキ、左下 ヤマボウシ)
雑式通り十番会館前辺りには六本のモミジバフウの木が植えられています。もみじの葉のようなフウの木、アメリカフウとも呼ばれ北米から中南米原産の落葉高木です。日本には大正時代に渡来し、街路樹や公園木として植栽されています。同じフウの仲間に台湾から中国南部原産のタイワンフウがあります。タイワンフウは江戸時代中期に渡来し、古くから公園などに植栽されてきました。葉が3つに中裂するのに対し、モミジバフウの葉は長さが12〜18cmと大きく、5〜7裂する違いがあります。フウは漢字では「楓」、音読みすればフウ、訓読みすればカエデです。モミジバフウも秋にはきれいな紅葉を見せてくれます。
十番通り中央付近にはコブシが植栽されています。コブシは北海道から九州まで広く分布するモクレン科の落葉高木です。3月から5月にかけ白い花を咲かせ、桜より一足先に咲いて春の訪れを告げるため、日本の各地でコプシの開花を農作業の基準とし、別名「田打ザクラ」「種蒔ザクラ」などと呼ばれています。漢字で書くと「辛夷」、冬芽は毛に覆われた厚い鱗片に包まれ、花芽の冬芽は大きく膨らんでいます。花弁は6枚で中心に近い部分は赤味を帯びています。つぼみや果実の形が幼児の挙(こぶし)に似ているのが名前の由来と言われています。
十番通りに落葉することなく緑を楽しませてくれる街路樹があります。クスノキです。関東以西の暖地に自生し、公園や寺社林によく植栽されるクスノキ科の常緑高木。大きく生長し、神社などで神木として崇められている巨樹も多いようです。常緑樹ですが葉の寿命は1年で、春に新葉がでる頃に前年の葉が落ちる、新緑の美しい常緑樹です。枝や葉に樟脳(しょうのう)の香りがしますが、防虫剤や医薬品などに利用される樟脳はこのクスノキから作られます。
南山小学校坂下周辺にはカツラが植えられています。カツラは北海道・本州・四国・九州と広く分布する落葉高木です。暖温帯上部にも見られますが、主にブナ林域などの冷温帯の渓流などに生育します。カツラはほぼ日本固有の樹種で、その新緑の葉の美しさから公園や街路樹としてよく見られます。もともと水分の多い肥沃な土地を好み、渓流沿い等によく生えています。ブナ林の渓流を歩くと、時として高さ30mに達する巨木に出会うこともあるそうです。
ちょっとかけ足でしたが、麻布十番商店街の八種類の街路樹、あらためて街の緑を楽しんでみて下さい。